公益財団法人 中村元東方研究所


名誉理事長ごあいさつ

慈しみの心を受け継いで


科学技術の発展を追い求めるあまり、人間の心の問題を軽視する風潮が顕著です。
科学や技術では決して答えの出ない「人間は如何に生きるべきか、人生の目的はなにか、何が善であり、何が悪であるか」、などといった大切な問題を考えるため、中村元東方研究所と東方学院は存在しています。
創立者の中村元はインド哲学や仏教学のみならず西洋の思想、哲学にも精通した世界的巨匠でしたが、東西の思想の蘊奥を究め尽くして最後に到達したのが慈しみの心(慈悲)でした。
私どもはご賛同くださる会員の皆様とともに、中村元が後世に残した高邁な理想の継承と発展に日々努力しています。
一人でも多くの方にこの集いに加わっていただけますよう心からお待ちしています。

公益財団法人 中村元東方研究所 名誉理事長
前田專學







理事長ごあいさつ

江戸時代、日本では「読み・書き・そろばん」を教える寺子屋が発達し、一般民衆の初等・中等教育を担っておりました。ですから江戸時代を通じて日本の識字率は世界一でした。

また、この寺子屋とは別に、地域の旦那衆たちが集まって学僧などを講主として、『天台四教儀』や『八宗綱要』などの仏教入門書を読んでもらっていたようです。いわばサロン、私塾です。このような町民や農民などからの文化の下支えが、明治維新以後の日本の急激な発展を支えました。

現代において中村元博士が、ただ研究を行うだけの場でなく、教育をも行う場所としての東方学院を設けられたことは大変大きな意義があると思います。大学や研究所などのアカデミックな機関では得られないテーマ選択の自由さ、規則にしばられない研究の自由さ、セクショナリズムからの自由さ、これらが東方学院の特長です。こうした私塾である東方学院を中村博士のご令室中村洛子名誉理事長、ならびに前田專學名誉理事長は「現代の寺子屋」と呼ばれています。

今後も、中村元博士の「慈しみの心」の原点を忘れず、現代の寺子屋のエネルギーを持続させ、それがやがて日本の文化の未来を支えることになるように努力したいと思います。

公益財団法人 中村元東方研究所 理事長
藤井教公






あらまし

設立の目的

当研究所は、東京大学名誉教授・日本学士院会員の故中村元博士(1912~1999:島根県松江市生まれ、文化勲章受章者、インド哲学・仏教学)によって創立され、「東洋思想の研究およびその成果の普及」ために活動する文部科学省所管の特例民法法人です。(組織概要
今日その活動は広く認められ、「特定公益増進法人」の指定を受けています。(あゆみ

基本理念

創立者中村元が掲げた当研究所の独自性は、以下の3点です。
 1. 生きた学問としての東洋思想研究
 2. セクショナリズムを越えた東洋思想研究
 3. 自発的・自立的な東洋思想研究

とりくみ

当研究所では、前項に掲げた理念のもと、研究・伝承の担い手を育て、学問研究により東洋の叡智の深奥・内実を明らかにすべく努めるとともに、その叡智を、専門研究者の専有物とすることなく、世代を超えて広く一般の方々と共有していくことを目指して、以下に紹介する3部門を設けて、意欲的な活動を続けています。

1.学術研究の推進(研究事業)

当研究所では、設立以来80余名に上る若手研究者を育成し、学界に送った実績をもちます。
個人研究
当研究所には現在24人の専任研究員が在籍し(研究員一覧)、各自が設定したテーマを追求しながら日々研鑽に努めています。
研究成果は、年度ごとに「業績報告」にまとめられ、目録が公開されています。
研究論集『東方』の刊行
研究論集の『東方』は、所属研究員の研究成果の主たる発表の場です。また、『東方』への論考の投稿は会員の種別を問わず全会員に開かれており、例年、意欲的な質の高い論考が、全投稿者共通の査読を経て、掲載されます。
この論集は、年1回刊行され、本研究所の全会員(維持、賛助、普通の各会員)に送付されるとともに、国内外の学術研究機関の間で取り交わされている「研究紀要交換プログラム」を通じて全国ならびに海外の大学図書館等に送られています。
研究部会活動
当研究所の研究活動は、創立者中村元が掲げた基本理念にもあるようにセクショナリズムを越えて行なうことが求められています。
研究員の研究領域は幅広い分野に及んでいることから、この理念を実現し、幅広い研究が行われるよう、横断的な研究領域についての意見交換の場として、6つの研究部会が設けられています。研究員は1つ以上の部会に所属し、開催される研究会を通じて研究に励み、この理念の実現につとめています。(研究部会
競争的資金(公的資金)による研究
当研究所は、文部科学省に登録され研究機関番号が付与されている正規の学術研究機関です。これにもとづき所属研究員には個別の研究者番号が付与され、国家の施策する研究に関する競争的資金の公募に応募することができます。
こうした競争的資金のうち、その採択件数が研究機関の研究遂行能力を示す指標の一つともなっている日本学術振興会の「科学研究費補助金」の採択率は、種別においても件数においても、民間の研究機関の中では異例ともいえる高い水準を例年維持しており、所属研究員ならびに研究所への高い評価を裏付けています。 (研究員一覧

2.研究活動の支援(助成・顕彰事業)

当研究所では、以下のような他研究機関等への寄付、ならびに研究会の内外の研究者個人への海外研究資金助成等を通じて、学問研究の進展と研究者の育成に貢献しています。
助成事業実績
・ 日本人学者の海外渡航援助
   アジア諸国海外研究・調査助成
   文化交流基金留学生派遣
・ 研究者個人、研究機関・団体に対する助成
   比較思想学会の創設に協力
   学問的業績の公刊
   図書の贈呈配布
顕彰事業実績
・ 中村元東方学術賞
東洋思想・文化の分野において成し遂げられた学術研究ならびに文化活動のすぐれた業績を世に広く顕彰するため、当研究所では、インド大使館と共催で、「中村元東方学術賞」を授与しています。(受賞者一覧

3.学術研究成果の紹介(普及事業)

当研究所では、こうした研究成果を広く一般の人々に伝え、共に研究する仲間に呼びかけるために、さまざまな普及事業を展開しています。
東方学院の開設
1973年には「真に教えたい一人と真に学びたい一人が集まれば学院は成り立つ」という創立者中村元の強い信念のもと、東方学院(東方学院)を設立しました。以来、一般の人びとが集う学び舎として運営しています。
また、日本各地で文化講座を開催するほか、講師の派遣を行うなど、研究成果の一般への普及に積極的に取り組んでいます。
公開講座の開催
参加者や学院講師がチャイを片手に楽しむ「中村元インド哲学カフェ」や「インド文化入門講座」をはじめ、一般向けの各種公開講座を全国各地で開催しています。
講師の派遣、その他
  足利学校アカデミー
  法恩寺(香川県高松市)
  東方学院松江校
上記の活動のほかに東洋思想・文化の普及のための出版物編纂への協力などに幅広く取り組んでいます。
中村元東方研究所の活動にご賛同くださる皆様へ

中村元東方研究所は、創立者中村元の理想を実現するため活動する非営利の文化事業財団であり、 その運営はご理解ご協力いただける皆様からのご寄附により成り立っています。 当研究所では各種会員を設定して、活動趣旨にご賛同いただける皆さまの積極的なご支援をお願いしております。

・普通会員 普通会員の皆様には、定期刊行物『東方』の他、各種行事、会合等のご案内をお送りいたします。
     普通会費(年会費) 7,000円
・維持会員/賛助会員 格別のご賛同をいただける皆さまには、維持会員もしくは賛助会員へのご入会をご案内しています (複数口でのご入会も歓迎いたします)。
     維持会費(年会費) 1口:5万円
     賛助会費(年会費) 1口:1万円

中村元東方研究所は2012年に公益財団法人の認可を内閣府より受けました。 このため、当研究所へのご寄附および維持会費・賛助会費は税法上の優遇措置の対象となります。 ご寄附が2,000円を超える場合には、その越えた金額が所得控除の対象となります。 (詳細につきましては、東京本部事務局までお問い合せ下さい。)

公益財団法人中村元東方研究所 会員申込書